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わたしはショートケーキが嫌い
第2章 ダークヒーロー

何度も何度も拳をめり込まして潰したパパの顔は、もう原型を留めていなかった。
鼻は潰れ目も潰れ、出っ張りは全て潰れていた。
パパの潰れた顔面からめり込ました拳を振り上げた時、ヌチゃっと言う気持ち悪い粘膜音がした。
「あー、殴りすぎた。拳痛い」
呑気にそんな事を言って血と肉の欠片がついた拳を軽くブンブンと振る男を、私は穴が開くほど見た。
さっき言っていた男の言葉が頭の中で再生される。
私の言いたかった事を代弁してくれていたような強烈な言葉。
どうしてこいつはこんなに知ってるのか。
どうしてこいつはこんなに私を庇うのか。
どうしてこいつはこんな事をしたのか。
まるで私の代わりに復讐してくれたように、
まるで私を助けてくれたみたいに、
まるで私のーーーダークヒーローみたいに。
さっきまでの気持ち悪さも恐怖も不思議となくなってきた。
この血生臭ささも鼻が慣れてきた。
衝撃も嫌悪感もない。
「あなたは‥‥‥だれ?」
真っ白なパーカーも、真っ白な肌も返り血で真っ赤に色を変えた男にそんな疑問を投げかけた。
男は私を見ると眉毛を垂れさせ、まるで盲導犬のような優しい顔で答えた。
「僕は美咲ちゃんを助ける為に現れたダークヒーローだよ」
ダークヒーロー‥‥‥。
「ふふふ」
なんだか可笑しくて笑えた。
 

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