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わたしはショートケーキが嫌い
第5章 はじめての宗教
なんとか剥き終わった林檎を見つめる。
言い訳をするなら、林檎を剥いた事がないから。
だから最後まで諦めずに剥き続けた事を褒めてほしい。
まな板の上に乗る裸になった林檎は、身をかなり削られた不細工な林檎だった。
なんてスタイルの悪い林檎なんだ。
「それ、林檎?」
暗転したテレビ画面を見つめていた美咲ちゃんが振り返り、ゴツゴツした林檎を見てそう聞いてきた。
僕は苦笑いしながら頷いた。
「‥‥下手くそ」
クスッと笑いながら美咲ちゃんはそう言って立ち上がり、不細工な姿になった林檎の前に来て僕から包丁を優しく取り上げた。
その姿を見て頭の中にテレビの砂嵐のようなザザっとした煩い音がした。
「はじめて剥いたの?」
サクッサクッと音をたてながら不細工な林檎を半分に切り、食べれるサイズにカットしていく美咲ちゃん。
その手先は見惚れるほど器用だが、同時に背筋に鳥肌が立つ。
やりなれた手付きで林檎をカットし終えた美咲ちゃんが突っ立ってみている僕に『お皿頂戴』と言ってきた。
僕は食器棚からプラスティックの皿を取り出して僕が剥いて美咲ちゃんがカットした林檎を乗せた。