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わたしはショートケーキが嫌い
第5章 はじめての宗教
「林檎、食べて」
お皿に乗せた林檎を食べるよう美咲ちゃんに言うと、優しく笑いながら林檎を一つ手に取り噛じった。
あ、食べてくれた。
「‥‥あなたも一緒に食べよう」
「いいの?」
「あなたが買ってきたんだから」
そう言って林檎を一つ僕に差し出した美咲ちゃん。
僕は美咲ちゃんから林檎を受け取り一口噛じった。
シャリシャリと林檎を噛じるたび水々しい音がする。
そのたびに僕は背中をゾワゾワさせていた。
「‥‥‥ちょっとお話しましょ」
林檎を噛じりながらいきなりそう言ってきた美咲ちゃん。
僕は『いいよ』と答えてもう一口林檎を噛じる。
美咲ちゃんは林檎を食べ終えると、また別の林檎を手に取り噛じった。
「あなた、私が何されてたか知ってるんでしょ?」
“何されてたか”、この言葉が意味するものを知っている僕は湧き上がる殺意を覚えた。
ちんこを切断され陥没した美咲ちゃんの父親の顔がフラッシュバックする。
僕は頷いた。
すると美咲ちゃんは長い髪を掻き上げながら言った。
「気持ち悪いわよね、パパも私も」
フッと鼻で笑いながら食べかけの林檎を皿に戻した美咲ちゃんは、うっすら目に涙をためていた。