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わたしはショートケーキが嫌い
第5章 はじめての宗教



何回、こんなに悲しそうに泣いてきたのか。
考えるだけで胸を刺されるような苦しさに襲われる。

実の親に体を汚され、心を踏み付けられた彼女が抱える闇は底無しの闇だ。

「ママは知ってたの、私がパパに何をされていたのか。一度ママは私がパパに犯されているとこを見たの。夜中にママが私の部屋を開けて、私と目が合ったわ。私は目で訴えた。“ママ助けて”って。けどママは静かに部屋のドアを閉めたわ。私がパパの精液に汚されている姿を見ながらゆっくりと」

「美咲ちゃん‥‥」

掛ける言葉が見つからない。
どうしてあげていいのか分からない。

美咲ちゃんの口は止まらない。

「後から知ったの。ピルを買ってきていたのはママだったって。産婦人科から処方された薬の袋にママの名前が書いてあった。どうしてママがピルを買ってきていたのかはもう分からないけど、多分パパを繋ぎ止めたかったんだと思う。パパを繋ぎ止めるために知らん顔をしてたんだと思う。私はそれを5年も我慢していた。5年よ?5年も実の父親に犯され、実の母親からは知らん顔をされていたの。何で私がそんな目に遇わなきゃいけなかったの?なんでなんでなんで!?」

泣きじゃくり声を荒げながら『なんで!?』と言葉を連呼する美咲ちゃんの姿は、ボロボロで疲れ切り深く傷を負っていた。

僕は恐る恐る手を伸ばし、美咲ちゃんの腕を掴み引いた。
ヒョイっと、まるでぬいぐるみの腕を引いたような軽さの美咲ちゃんに少し驚きながら僕は美咲ちゃんを抱きしめた。

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