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わたしはショートケーキが嫌い
第7章 グレーテルは知らない




そして、今日も。

「私は気がおかしくなったのかしら」

体中からする異臭と、指先を襲う気持ち悪い感触に鳥肌を立てながら彼にそう言い苦笑いした。

彼は相変わらず不器用な手先で林檎の皮を一生懸命剥いていた。

シャリ、シャリと水々しい音が鼓膜に響く。

「きっとショックが原因だよ」

そう言いながら彼は林檎の皮を剥き終えるとカットして芯を取り除いた。

林檎の果汁が包丁の刃をベトベトに濡らす。

「目の前で親を惨殺されたんだから、そのくらいの症状当たり前だよ」

いやいや、殺したのお前な?

思わず心の中でツッコんだ。
そして溜息をついた。

彼はカットし終えた林檎をお皿に乗せると、私の座っているテーブルまで運んでくれた。

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