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わたしはショートケーキが嫌い
第9章 昔々、ある所に
あの人にも言われた言葉だった。
『あんたはまるでお面みたいに笑う』
気味悪そうにそう言ってあの人は僕を嫌った。
「前にも同じこと言われたよ」
「誰に?」
首を傾げて聞く美咲ちゃんに短い単語を返した。
「母親」
“母親”。この単語を聞いた美咲ちゃんはピクッと眉を動かし、気まずそうに顔を歪めた。
僕はハハハと笑いながら、『気にしなくていいよ』と言って美咲ちゃんから目を逸らした。
「ねぇ、私あなたの事何も知らないから教えてくれない?」
「知る必要ないから」
「私ばっかり知られてるなんてズルいわ。だからあなたの事少しでもいいから教えてよ」
僕に興味を示す美咲ちゃん。
何も知らないから‥‥か。
僕は『ん〜』と唸りながら両腕を組み、考える動作をした。
そしてベッドに座る美咲ちゃんの隣に腰をおろし、顔を覗き込んだ。
「じゃあ、ちょっとだけなら」
僕はゴホンと咳払いをし、子供を寝付ける為に絵本を読み聞かせる母親の様な話し方で話し始めた。
「昔々、ある所にスーパーマザコンがいました」