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わたしはショートケーキが嫌い
第10章 盲目的な愛情は身を滅ぼしかねない
「なんでハサミで切られたこと知ってんの?」
クチャっと、ビックマックが歯で潰される音が鼓膜に響いて鳥肌が立つ。
俺はゴクリと噛み潰したビックマックを飲み込み、耳の後ろを人差し指で掻いた。
やらかした。
慶太は表情を変えない。
気持ち悪い程涼しそうな顔をしている。
俺は深く息を吸い込み、声が漏れるほど息を吐いた。
「実は‥‥慶太のスクールバッグに血だらけのハサミが入ってたの見たんだよ」
「やっぱりか」
「お前長谷部の事件に関与してんのか?」
この際直球で聞こうと思った。
開き直ってみた。
慶太は呑気にポテトを食べながら一言『多分』と答えた。
ふざけた答えだ。
多分ほどいい加減な回答はない。
「お前事の重大さが分かってるのか?あ?多分じゃねーだろ!」
思わず声を荒げて怒鳴っちまった。
俺の怒鳴り声にフードコート内にいる人達がチラチラと俺を見る。
『喧嘩?』『不良か?』など、いろんなヒソヒソ声が耳に入ってきて小蝿のように鬱陶しかったが無視した。
今はそんな小蝿みたいな小声を気にしてる場合じゃない。
慶太は呆れたように溜息をすると、『落ち着けよ』と俺を宥めた。
「落ち着けよじゃねーだろ。呑気にビックマックなんか食いやがって」
怒りで興奮し震える声で慶太にそう言うと、慶太は妙なことを言い始めた。
「牛豚鶏が殺されたって騒がないだろ?」
あまりにも話題から逸れた話しにクエスチョンマークが頭から飛び出す。
こんな時にこいつはなんの話をしてるんだ!?
馬鹿なのか!?