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わたしはショートケーキが嫌い
第10章 盲目的な愛情は身を滅ぼしかねない



「家畜の話なんてどーでもいいんだよ」

ぶん殴りたかったがグッと堪えた。
ここで乱闘騒ぎを起こせば間違いなく警察が来る。
そしたら慶太は‥‥前科がつく。

怒りが段々と不安に形を変え、焦りも生まれる。

「牛豚鶏の話なんてどーでもいいんだよ慶太。お前、頭大丈夫?捕まるかもしれないんだぞ?分かってるのか?」

「‥‥‥恭平、お前もなかなかおっかない奴だな」

フフと意味深に笑う慶太。

どうしてそんなに余裕なんだよ。
どうして微塵も動揺しないんだよ。

まるでサイボーグみたいだ。
感情のないサイボーグ。

「おっかないのはお前だよ慶太」

目の前にいるサイボーグみたいに表情を変えない慶太は眼鏡のレンズの奥で2回ゆっくりと瞬きをした。
そして俺に聞いた。

「お前は人を殺したかもしれない俺を見逃す気か?」

ポロッと、片目から涙が溢れて頬を伝った。

「当たり前じゃん」

ポロポロビー玉みたいに涙が頬を伝い転がる。

「俺は、お前が警察に捕まるかもって考えたら不安で不安で」

「人を二人も殺した俺をお前は庇うの?あんな猟奇的に人を殺したのに?」

「庇うよ。だって俺、お前がいなくなったら‥」


異性を愛する感情。
家族を愛する感情。
友達を愛する感情。

どれにも当てはまらない。

慶太への愛情はどれにも当てはまらない。

こんなにも愛してるお前がいなくなったら俺は壊れてしまう。


「ほら、やっぱお前おっかない奴だよ」

鼻で笑う慶太の目は、哀れなものを見るような目に見えた。


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