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わたしはショートケーキが嫌い
第10章 盲目的な愛情は身を滅ぼしかねない
楽しそうに笑っている慶太の目は真っ黒く真っ黒く染まり濡れている。
テラテラと怪しい光を放ちながら俺を見る。
「彼女が教えてくれた」
「へ?」
「嫌なことの忘れ方を教えてくれた」
キュッと目を細める慶太はいつもしている手首のリストバンドを外し、手の平を見せるようにクルッと腕を半回転させた。
「お前にも教えてやろうか?恭平」
怪しく笑う、ニィと口角を上げた慶太の口と同じ三日月形の痛々しい傷が慶太の手首の上で笑っていた。
予想はしていた。
リストバンドの下に隠されているのはリストカットの跡だろうと。
けれど実際目にしてみると生々しくて目を逸らしたくなる。
「痛い事も、嫌な事も、全部全部忘れる方法」
慶太はヤク中のようにヘラヘラ笑いながらリストカットの跡を撫でていた。
俺は黙ったままそんな慶太を見ている事しか出来ない。
目も逸らせない。