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わたしはショートケーキが嫌い
第11章 男の秘密を覗くもんじゃない


まるで手術をする医者のように慎重に財布を開き中を漁る。
保険証も免許証もない。
レンタルビデオ店のポイントカードの裏にも名前は書いておらず、彼の名前を知れるものが何一つこの財布の中にはない。

妙な財布だ。

彼を証明するものが何一つない。

免許証は持っているはずだ。
ここまでは彼の運転で連れて来られた。

まさか無免許?
人を殺したんだ。今更無免許ぐらいなんてことないだろう。
けど保険証くらいあるだろう。

隠しているのかな?
なんの為に?
私にバレない為?
どうして?

秘密を知ろうとすればするほど分からなくなり、秘密を覗こうとすればするほど見えなくなる。

まるで煙みたいだ。

見えるけど掴めない。

ヤケになり財布を思いっきり開き逆さまにして振ってみた。
ダメ元で足掻いてみる。

するとカランと言う乾いた音をたててテーブルの上に鍵が落ちた。

くすんだ銀色の鍵だ。

私は恐る恐る財布から落ちてきた鍵を掴みジーっと見て観察した。

一体なんの鍵だろう?

怪しいその鍵は濁りながら光る。
ミステリー小説やサスペンスドラマだったらこの鍵がポイントアイテムになるだろう。

恐らく、この鍵はミステリー小説やサスペンスドラマ同様秘密を隠す鍵だろう。
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