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わたしはショートケーキが嫌い
第11章 男の秘密を覗くもんじゃない
握っている手の平を広げ、くすんだ怪しい鍵を見つめる。
「彼の秘密を教えてよ」
話せるはずのない鍵にお願いした。
すると『何してるの?』と言う低い声が頭の上からした。
その低い声は聞いたことのないような声だった。
少し震えたような低い声。
焦って上を見るとーーー
「あっ‥‥‥」
思わず漏れた一言は恐怖から漏れた私の短い悲鳴。
あの日と同じ目をした男が私を見下ろしている。
濡れた髪からは雫が垂れ、私の頬に落ちる。
彼の金髪から垂れ落ちた冷たい雫が思い出させる。
血の臭い。
血飛沫がかかる瞬間。
ペニスが切断される瞬間。
「あ‥‥‥あ」
私に向けた事のない目が私を見る。
獲物を睨む肉食動物のような目。
彼は素早く私の手からくすんだ鍵を奪い取り、強すぎる力で私の腕を掴んだ。
「痛い‥‥‥」
「この鍵を使った?」
「え‥‥‥?」
「この鍵を使ったの!?」
痛みと恐怖に顔を歪ます私に構わず彼が怒鳴る。
体が勝手に震える。
私は必死に声を絞り出した。
「つか、使ってない‥‥使ってないです‥‥」
目から涙がこぼれた。
腕がとても痛い。
「‥‥ねぇ、美咲ちゃん」
興奮を抑えるようなか怒りを抑えるような、そんな口調で彼が訊ねる。
「君の後ろは何に見える?」