この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
声を忘れた歌姫 ~ トラワレノ キミ ~
第1章 幽霊屋敷にお姫様
「何か聞こえないか…!?」
「甲高い、耳鳴りのような」
ガードマン達は自身が感じる異変を互いに言い合いながら、それが聞こえているのが自分だけでないと知る。
彼等が耳にしたのは、モスキート音に近い
キーーンと不愉快な高音だった。
ただそれは近くで鳴っているわけではなくて、この屋敷のどこかで小さめに音を発している。
音の発生源を見定めようと、きょろきょろと辺りを見渡すガードマン達──。
「……?」
けれどスミヤだけは違った。
スミヤにとっては、これが音ではなかった。
「…僕には、唄が聞こえるよ」
…そう、スミヤにとっては音ではなく唄( ウタ )。
高い声で唄を歌う誰かが、この客間の近くにいる。
「まさか本当に……?」
幽霊、とか?
「向こうの部屋から聞こえるね」
スミヤは明らかに楽しんでいる。
彼は客間の続き部屋に許可なく入り、さらに奥の扉に手を掛けた。