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声を忘れた歌姫 ~ トラワレノ キミ ~
第1章 幽霊屋敷にお姫様

「何か聞こえないか…!?」

「甲高い、耳鳴りのような」

ガードマン達は自身が感じる異変を互いに言い合いながら、それが聞こえているのが自分だけでないと知る。


彼等が耳にしたのは、モスキート音に近い

キーーンと不愉快な高音だった。


ただそれは近くで鳴っているわけではなくて、この屋敷のどこかで小さめに音を発している。

音の発生源を見定めようと、きょろきょろと辺りを見渡すガードマン達──。



「……?」


けれどスミヤだけは違った。

スミヤにとっては、これが音ではなかった。


「…僕には、唄が聞こえるよ」


…そう、スミヤにとっては音ではなく唄( ウタ )。

高い声で唄を歌う誰かが、この客間の近くにいる。


「まさか本当に……?」


幽霊、とか?


「向こうの部屋から聞こえるね」


スミヤは明らかに楽しんでいる。

彼は客間の続き部屋に許可なく入り、さらに奥の扉に手を掛けた。


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