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声を忘れた歌姫 ~ トラワレノ キミ ~
第1章 幽霊屋敷にお姫様
大きく開いた色素の薄い瞳がスミヤの姿を映し出す。
だが彼女のその怯えた表情は、幽霊としてはどうも腑に落ちなかった。
なんだ、生きているのかな。
幽霊にしては反応が人間くさい。
期待していた霊ではなかったと失望するスミヤだが、彼女への興味はまだ残っていた。
「…ごめんね、驚かせてしまって」
怯える女の子にもっとも効果的な…猫なで声で
彼はそっとバルコニーに近付いた。
「君は誰?ここに住んでいるの?」
相手は無言で後ずさるが、気にしない。
「僕はブレット氏と契約したボディーガードだよ。東城スミヤ。…大丈夫…何もしないから」
「……」
「君の名前を教えてくれないかい?」
「…っ」
あれ、おかしいな。
ここまで優しく話しかけているのに…まだ怯えている。
「…っ…どうして僕を怖がるのかな?君の綺麗な歌声に吸い寄せられて…こうして部屋に入ってきてしまったんだ」
「──…!」
「……?」
不自然だった。
彼女の反応に不自然さを感じ、スミヤは足を止めた。