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声を忘れた歌姫 ~ トラワレノ キミ ~
第2章 声なき悲鳴
仲間からの連絡だ。
「どうしました?」
『屋敷東側、窓ガラスが割れている』
「…っ」
いつの間に?
割れた音は聞こえなかった。
“ これだから雨は嫌いだよ ”
「寝室に異常はありませんか?念のため戸を叩いてマリアの無事を───…了解。では割れた窓の位置を詳しく教えてください」
スミヤは冷静に仲間たちと情報を確認し合った。
ひとまずマリアの生存は確認したらしい。なら焦るのはマイナスだ。
スミヤの指示を受けて、端末機に位置情報が送られてくる。
「…3階…廊下の突き当たりか…。了解、僕が向かうので、皆は持ち場で厳重注意を!」
彼は階段を上がり、窓が割られた現場に直行した。
───
「…あれか」
ガラスの破片が床に広がり、煌めいている。
もし今宵が月夜であればもっと美しかったろう…。スミヤはそんなことを思い、呑気な自身を笑った。
“ これは銃弾の割れかたじゃないね…。弾も…見当たらないし ”
天井や、向かいの壁を観察するも、銃弾がめり込んでいるわけではない。
つまり狙撃による破壊ではない──彼はすぐに結論を出した。