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声を忘れた歌姫 ~ トラワレノ キミ ~
第2章 声なき悲鳴
本当に手のかかる家だ。
タワーマンションの一室を警護するほうがどれだけラクか──。
“ そういえば幽霊の可能性もあるんだっけな ”
怪奇現象まで考慮に入れる必要があるのか
これは骨の折れる仕事だよ。
スミヤは僅かな異変も見逃すまいと、カメラの映像と平行しながら慎重に3階を見て回る。
──そして彼は、ある声を聞き取った。
“ …話し声… ”
雨の音に掻き消されながらも、途切れ途切れに届いてくる話し声。
この声は屋敷の主であるブレット氏のものだと推測し、スミヤは聞き耳をたてる。
事前の話によれば
使用人や客人の部屋が1階で
2階に住んでいるのが娘のマリア、3階がブレットだと聞いている。
つまりこの3階にある無数の部屋…、使っているのは、たったひとりと言うわけだが
“ …何故、話し声が聞こえるんだろうね ”
スミヤは瞬時に、矛盾を見つけた。