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声を忘れた歌姫 ~ トラワレノ キミ ~
第3章 話してごらん
「どうして返事をしてくれないんだい?」
スミヤは必要以上に近付かない。
部屋の真ん中、紅の絨毯( ジュウタン )の上で足を止めて、次は相手のほうから来るのを待った。
「ね、怖がらずに話してごらん」
《 …本当に…?わたしの声が聞こえるの…? 》
「……ああ、聞こえるよ」
彼女は猫だ
それも、臆病な猫。
《 どうし て……? 》
リリアは困っていた。
肩は少し震えていたかもしれない。
不安と困惑で大きな目を潤ませ、震えを止めようとするかのように強くドアノブを握って──。