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声を忘れた歌姫 ~ トラワレノ キミ ~
第3章 話してごらん



ポロロン...


「また、聴かせてくれないかい?」


背筋を正し、片手を鍵盤にあずける。

前に置かれた楽譜を初めのページまでめくって、指慣らしに少し弾いたスミヤは、戸惑うリリアに顔を向けた。


こちらの準備が整ったことを、交わう視線で彼女に伝える──。


「……おいで」


声色を低くして静かに発した言葉は

誘いというより、命令に近かったかもしれない。



けれどリリアにとっては、むしろ命令されたほうが素直に従えるのだろう。


彼女はコクンと頷いて、ピアノの横に立った。






♪~



演奏が始まる。


それはゆったりとしたジャズピアノだった。




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