この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
声を忘れた歌姫 ~ トラワレノ キミ ~
第3章 話してごらん
ポロロン...
「また、聴かせてくれないかい?」
背筋を正し、片手を鍵盤にあずける。
前に置かれた楽譜を初めのページまでめくって、指慣らしに少し弾いたスミヤは、戸惑うリリアに顔を向けた。
こちらの準備が整ったことを、交わう視線で彼女に伝える──。
「……おいで」
声色を低くして静かに発した言葉は
誘いというより、命令に近かったかもしれない。
けれどリリアにとっては、むしろ命令されたほうが素直に従えるのだろう。
彼女はコクンと頷いて、ピアノの横に立った。
♪~
演奏が始まる。
それはゆったりとしたジャズピアノだった。