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声を忘れた歌姫 ~ トラワレノ キミ ~
第3章 話してごらん
そこに、リリアの唄が重なる──。
“ やっぱり、美しいな… ”
スミヤは感心した。
彼女の唄が上手かろうが下手だろうが、本来はどちらでもいいのだ。
「上手だね」の ひと言を添えて相手を有頂天にさせてやれば、心を開かせることができる。
だが…彼女の声は
そんな嘘でおだてる必要もない。
普段は刺激されない音域に響いてくるからなのか
スミヤの耳に、それは心地よく届いた。
ピアノを弾く彼の表情が柔らかくなっていくから、それに合わせてリリアの緊張もほどけていく。
♪~
のびやかに、透きとおる
リリアの歌声は──清らかに流れる春の小川を想わせた。