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声を忘れた歌姫 ~ トラワレノ キミ ~
第3章 話してごらん
それも当然。
彼女がこうして歌の指摘を受けるのは、実に1年ぶりだったのだから。
「可愛い泣き顔だ───…でも」
スミヤは彼女の両手を握りしめたまま、もう一方の手を伸ばして目尻の涙をぬぐった。
「君みたいな子が、男の前で簡単に泣くものじゃない…。そんなふうに泣かれたら、大抵の男は勘違いしてしまうんだよ?」
《 …ッ─…? 》
「胸の中で叫ぶ想いがあるのなら、涙でなくて言葉で伝えてごらんよ」
《 っ……でも、…でも、そんな事をしたら…》
「平気さ──…僕にしか聞こえない」
だが注意は必要だ…。
君がこれから伝える内容によっては、事態を悪化しかねない。
僕はやろうと思えば何だってやる。
そういう無責任な男だからね。
だからその覚悟を持って、伝えないと──。