この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
声を忘れた歌姫 ~ トラワレノ キミ ~
第3章 話してごらん
「覚悟があるなら、伝えてごらん」
《 …わ…わたし…… 》
握った手を引かれて、彼女は前に足を出す。
《 この家、から……っ…!! 》
一歩、二歩と……
近付いた彼女は、座っているスミヤに身体を預けた。
《 ───……助けて…!! 》
「……」
《 助けて……下さい…、スミヤ様……!! 》
「…僕の名を覚えていたんだね。いい子だ…」
ちゃんと言えたご褒美に……
スミヤは彼女の顎をとって、唇と唇を重ねる。
泣いているリリアの息が止まらないように、唇が触れている時間は一瞬だった。
スミヤが期待していた言葉はこんな物ではなかったが、それでも仕方がない。
彼女が《 助け 》を望んだのは、なにも今が初めてではないのだから。