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声を忘れた歌姫 ~ トラワレノ キミ ~
第4章 身代わり
「…ッ…こんな夜這いのされ方は初めてです」
「♪」
「ミス、マリア」
「マリアでいいって言ったじゃない」
地面に背を付け仰向けのスミヤは、両肘で身体を支えながら彼女に顔を向けた。
彼女──マリアは、スミヤの上に乗ったままなかなか降りようとしない。
端から見れば、スミヤが襲われているまさにその現場である。
「…では、マリア。警護対象者である貴女がこんなところに出てきていいとお思いですか?」
「だって貴女の役目はわたしを守ることでしょう?プロなら、場所なんて選ばないはずだわ」
「…フ」
マリアの自己中心的な性格は相変わらずで、スミヤの警告も意味をなさない。
警護5日目にして、まだ自覚が足りないらしい。
彼の上に跨がって呑気に笑っている彼女を──
「きゃああ!?」
スミヤは、逆に突き返してしまった。