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声を忘れた歌姫 ~ トラワレノ キミ ~
第4章 身代わり
今度はマリアが地面に背を付き、スミヤに覆い被さられた。
「何するの酷いわ!」
「──喋るな」
「……っ」
信じられない思いで抗議の声をあげるも、声色を低くした彼の命令で本能がすくむ。
…彼の手には銃があった。
それを、マリアの喉元に突きつけていた。
「…銃口を向けられるのは初めて?どんな気分ですか」
「…や、やめ…」
「貴女は僕達を雇われ兵と、そう呼びましたよね。ならば知るべきです。兵達は常に、銃口をこめかみに当てられた状況で仕事をしていると…」
スミヤの声はすぐにいつもの柔らかさに戻っていたが、依然として、顔に張り付けた偽物の微笑みは人形のようだ。
「──…そして学ぶべきです。守られる者の謙虚さを、ね」
「……!」
「…それができない者は死にます」
死ぬ、どころか殺す、とまで言いそうな雰囲気だった。
マリアは怯えてコクコクと頷く。