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声を忘れた歌姫 ~ トラワレノ キミ ~
第4章 身代わり

「──スミヤ!」

マリアが地面から腰を上げ、土もはらわずに彼にしがみつく。

スミヤは急に立ち上がった彼女を両手で受け止めた。


「手を貸してほしいの!あの子をこの家から逃がすために」

「罪を償うのに僕を利用するのですか?」

「そうよ」


リリアとは違う色の、長い髪──

振り乱して、男に命令する勝ち気な瞳は、同じ様に美しかった。


「わたしの友達に話は通しているの。リリアをかくまってくれる、だからその子の家まで…!!」

「……」

「連れていくのよ!」

「…命令か、参ったな」


胸ぐらに掴みかからんとするマリアの熱意は、逆に彼の思考を落ち着かせていく。



「──…ならそれを手伝えば、貴女は僕に何をくれますか?」


「なんですって…!?」


「冗談ですよ」



スミヤはしがみつく彼女の腕をとって、そっと自身から引き剥がした。





「貴女に報酬は求めません。
 僕に頼んだのはリリアだから…──」





《 助けて……!! 》



僕のような男に助けを求めた、愚かな君に


応えなければならない──これは義務だ。





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