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声を忘れた歌姫 ~ トラワレノ キミ ~
第5章 任務終了
「どういう事なんだ!? 」
そして夕刻──
そこには、怒りのあまり声を荒げるブレット氏が。
普段の穏やかさは影を潜めていた。
今の彼は、…初日の夜、スミヤが盗聴したあの時の《 男 》にそっくりだ。
リリアがいなくなったのだ。
鍵はかけていた。
寝室の隠し扉も閉まっていたし、彼女を閉じ込めていた部屋も同様だ。
だがブレットが帰宅した時にはすべての鍵が開けられており、部屋はものけの空だった。
「申し訳ありません。ブレット氏」
「君は…っ…君達はっ、いったい何をやっていたのだ!」
荒れている彼の前で、その言葉を受け止めるスミヤ。
「僕達が警護していたのはあくまでマリア様です。真の狙いがリリア様だったとは、思わなくて」
まったく焦りのないスミヤの話し方は
ブレット氏を落ち着かせたいのか逆上させたいのか…いまいちわからない。