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声を忘れた歌姫 ~ トラワレノ キミ ~
第5章 任務終了
「もう終わりにしましょう。母様が…悲しむわ…」
「マリア…!!」
駆け寄ってきた娘の姿をとらえた視界は
血が昇りすぎた頭では、どうしても霞んでしまう。
ブレットは耐えきれずに崩れた。
泣くように呻き、尻餅をつく。
「…また…おいて行くのか…!!」
彼が何に泣いているのか、スミヤには知り得ない。
…あまり関心も持てない。
「……」
ひと欠片の同情も見せず、その場を後にした。
───
「待ってスミヤ!」
彼が階段を下ったところで、後ろから追いかけてきたマリアが呼び止めた。
立ち止まったスミヤは
赤い絨毯( ジュウタン )が敷かれた階段の──上から見下ろす彼女に振り返る。
「これで僕らのお役は御免かな」
「……!」
「貴女は本当にくえない女( ヒト )だね」
スミヤの口から敬語が消えている。
それは、ボディーガードの契約が…今をもって終わったからだ。