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声を忘れた歌姫 ~ トラワレノ キミ ~
第5章 任務終了
「脅迫状が届いたというのは、嘘だね」
「……気付いていたの?」
「貴女は命なんて狙われていない…。僕らガードマンを呼ぶための嘘だよね。リリアを逃がすために利用して、そして憎まれ役を押し付けるために」
それだけじゃない。
初日の夜に割られた窓。あれもマリアの仕業だった。
窓は内側から割られていた。
それなのに、外を覗いても、雨でぬかるんだ地面に足跡はひとつも見当たらなかった…。
割った犯人は屋敷の中に戻ったということだ。
「貴女の寝室の隠し通路を使えば、カメラに映らずにあの現場へ向かえる。さしずめ狙いは…──」
「……」
「僕を3階へ誘導し、父親とリリアの関係に気付かせようとしたんだろう?……まんまと引っ掛かったよ」
「…怒ってる?」
「そんなことで怒らないさ」
ただのわがまま娘だと見くびっていたら…
見事に自分を騙し、操ってくれたものだ。
スミヤは素直に感心していた。