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声を忘れた歌姫 ~ トラワレノ キミ ~
第6章 報酬は、刹那的な温もりで

「起きたんだね」

「……」

「ここはウィンチェスター家の屋敷じゃない。マリアの友人の家だよ。君を預かってくれるそうだ」

リリアはそんな事を尋ねていない。

彼女の目はまっすぐスミヤにしか向いていないが、彼は勝手に状況を説明した。


「…僕にできることは、ここまで」


身体を起こした彼女の頭に手をおいて撫でながら…


「国に帰らないといけないから、もう二度と…君には会えないんだ」


そう告げた。


しかしリリアは彼の腕を両手で掴んだ。

掴まれた腕を見ながらスミヤは困った顔で笑ってみせる。

…それでも振りほどこうとはしない。


リリアが身を前にのり出して、彼と唇を重ねた。

ベッドに腰かけたまま、スミヤは大人しくそのキスを受け止めた。



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