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声を忘れた歌姫 ~ トラワレノ キミ ~
第6章 報酬は、刹那的な温もりで
目を閉じた二人の重ねるだけの軽いキス。
それは奥歯が痛くなるほど──優しくて甘い。
...チュ
「……ねぇ…リリア」
何度も繰り返してから、吐息の隙間からスミヤが話しかける。
「間違っても…僕に、恋をしてはいけないよ」
それを聞くリリアは唇を強く押し付ける。
「…僕は君を自由にしたけれど……君を、幸せにできるわけじゃない……」
「……」
自由にするのは簡単だ。
ならその後は?自由になったリリアはどうやって生きていく?
歌姫には戻れない…
マリアの友人だって、いつか彼女の存在を疎ましく思うだろう。
《 でも…… 》
「──…」
《 それでも、わたしは嬉しかったから…… 》
スミヤが唇を僅かにひらいた。
彼にしか聞こえない声で答えを返しながら…リリアが彼の下唇を食む( ハム )。