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声を忘れた歌姫 ~ トラワレノ キミ ~
第6章 報酬は、刹那的な温もりで
そこでやっとスミヤの舌がちろりと現れ、彼女の口の端を舐める。
互いの唇が柔らかな感触に包まれる。
そしてスミヤの舌が彼女の前歯をつついた──もっとひらけという合図だろう。
「…ハァ…」
“ ──…幸せなんていりません…スミヤ様 ”
だって…わたしはこんなに嬉しいんです。
自由になったことが嬉しいんじゃない。
勇気を出して伝えた「助けて」を
聞き入れてくれた…それが嬉しくて、涙がでるくらい。
“ だからあなたにお礼がしたい… ”
どうすれば喜んでくれますか?
何を、あなたにあげれば…───
「……、泣いてる の……?…リリア…」
絡み始めた舌に、涙の味が混ざる。
目を開けることなく…スミヤは満足して笑う。
腕を掴んでくる細い指は力を無くして、なんとか服の布をつまんでいる状態だった。
そんな手を片方、掴み返して──
引き寄せながら、彼女のくびれた腰にも手を回した。