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声を忘れた歌姫 ~ トラワレノ キミ ~
第1章 幽霊屋敷にお姫様
試しにひと押し……と
スミヤは一歩 前に出た。
「ミス、マリア…」
「マリアでいいわ」
おっと、早速
話の出鼻を折る礼儀の無さだ。
「…ではマリア。貴女は今日から僕たちに命を預ける身だ。そのためにも、僕に心を開いて協力して頂く必要があるんですよ」
「…っ、わかってるわ、そのくらい」
「理解頂けているようには見えませんね」
「何よあなた!雇われ兵のくせに!」
「……!」
けっこうな美人だが、とんだじゃじゃ馬だ。
握手を求めても断られるだろう。
だが前に出した手を下げることもできず、スミヤは苦く笑うしかない。
「いい加減にしなさいマリア…っ、どうしたんだ今日は、子供みたいにわめいて」
「…何でもない…っ」
娘の失礼な振るまいに、何事かと慌てる父親。
マリアはつんと顔を反らして、階段を上がって行ってしまった。