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声を忘れた歌姫 ~ トラワレノ キミ ~
第1章 幽霊屋敷にお姫様

ブレット氏はスミヤ達に謝罪をし、彼等を客間へと案内した。

「早速だが君たちには、我が家の間取りを頭に入れてもらわなくてはならない」

用意されていた図面を、歩きながら手渡される。

それに目を通したスミヤは眉をひそめた。


“ 何だこの家は?まるで…迷路のような造り ”


LGA内の東城家も他に類を見ない変わった家だが…これは、さらに上をいく。

改めて辺りを見回すと、曲がった廊下や、突然ある突き当たり…。計画性のない設計が伺えるこの屋敷は、異様そのものであった。


「驚いているようだね」

「…っ…ええ、あまりに複雑な家なので」

「理由はあるのだよ。私の先祖は、銃のビジネスで成功した実業家でね」

「……」


ブレット氏は簡単な説明を始めた。



…実業家の妻であった女は、夫の死後、悪夢にうなされることになった。

なんでも、夫の開発した銃で殺された人々の霊が彼女を呪っているのだという。

呪いに怯える未亡人はいつ霊に襲われても逃げ切れるようにと…

死ぬ寸前まで、屋敷の増築をし続けたそうだ。




「──…だからこんなに、隠し通路や秘密部屋があるんですね」

「そのとおりだよ。部屋の数は40を越えている」

「家族二人には多すぎますね」

「……」


なんだ、幽霊屋敷だったのか。

その手の話題はわりと好きなスミヤだった。

本当に霊でも出てきてくれれば退屈しないですみそうだと、まんざらでもない様子。


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