この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
声を忘れた歌姫 ~ トラワレノ キミ ~
第6章 報酬は、刹那的な温もりで
彼女の女体が媚声とともにしなった。
「…っ…目を開けて、僕を見ろ」
《 …ハァ…ハァ、─ッ…スミヤ様…… 》
官能一色に染まろうとする頭に
めまいがするほど色っぽい…彼の声が届く。
彼は目を開けるように言っている。でも
リリアはそうするのを躊躇った。
もし今 彼の顔を見てしまったら、自分は恋に落ちてしまうとわかっていたから。
“ スミヤ様は、手のとどかない人… ”
わたしを助けてくれた王子様。
恋をしてはいけない。
叶うわけがない、そんな想いを抱えるだなんて…。
「──…リリア」
「……っ」
けれどどれほど迷っても
リリアが彼の命令にそむける筈もない。
リリアは睫毛を震わせて、怯えながら瞼を上げた。
ひらけた視界では彼の黒色の髪と…その下から覗く蒼色の瞳が、灯りの色を落とし込んでゆらゆらと揺れて見えた。
「僕のが…欲しいかい…──?」
《 …っ…。……欲しい 》
「……、そうか…」
まっすぐ射止めてくる眼差しは
けっして…鋭いわけではなくて。
その優しさに吸い寄せられて、リリアは素直に言葉を返した。
彼女の返事を聞いたスミヤが、とても嬉しそうに笑ってくれたから、彼女は心から安堵した。