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声を忘れた歌姫 ~ トラワレノ キミ ~
第6章 報酬は、刹那的な温もりで

彼女の女体が媚声とともにしなった。

「…っ…目を開けて、僕を見ろ」

《 …ハァ…ハァ、─ッ…スミヤ様…… 》


官能一色に染まろうとする頭に

めまいがするほど色っぽい…彼の声が届く。


彼は目を開けるように言っている。でも

リリアはそうするのを躊躇った。



もし今 彼の顔を見てしまったら、自分は恋に落ちてしまうとわかっていたから。



“ スミヤ様は、手のとどかない人… ”



わたしを助けてくれた王子様。

恋をしてはいけない。

叶うわけがない、そんな想いを抱えるだなんて…。




「──…リリア」


「……っ」


けれどどれほど迷っても
リリアが彼の命令にそむける筈もない。


リリアは睫毛を震わせて、怯えながら瞼を上げた。


ひらけた視界では彼の黒色の髪と…その下から覗く蒼色の瞳が、灯りの色を落とし込んでゆらゆらと揺れて見えた。



「僕のが…欲しいかい…──?」


《 …っ…。……欲しい 》


「……、そうか…」



まっすぐ射止めてくる眼差しは

けっして…鋭いわけではなくて。


その優しさに吸い寄せられて、リリアは素直に言葉を返した。

彼女の返事を聞いたスミヤが、とても嬉しそうに笑ってくれたから、彼女は心から安堵した。



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