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声を忘れた歌姫 ~ トラワレノ キミ ~
第6章 報酬は、刹那的な温もりで
───…
静寂を取り戻した部屋。
ベッド以外はほとんど家具のない簡素な部屋に、男と女の匂いがむせる。
身支度をすませたスミヤが窓に少しの隙間を作ると、穢れのない自然の香りと風が吹き込んだ。
彼はぐったりと眠りに落ちたリリアの汗をぬぐい
布団をきれいに整える。
寝かせた彼女の枕元──ランプシェードの灯りを消した。
外からの明かりも無いに等しい…
出口の戸もわかりにくい暗闇の中で、スミヤの目はしっかりと彼女を見詰めていた。
「…さようならリリア。君は本当に可愛らしい女性だったよ」
刹那的な情事の相手へ、届かない言葉を残す。