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夜這い生活
第2章 準備
子供の頃だった。

孝之の住む団地は隣同士が近く、当時の子供達はベランダ越しにお互いの家を行き来して遊んでいた。
ちょっとした冒険感覚で、また落ちたらとても危険なのがより子供達の好奇心を煽った。
とは言ってもせいぜい二階くらいの高さでしかその遊びは実施していなかったのだが。

今は真夏だ。
もしかしたら、今なら夜間、あの子の家は窓を開けているのではないか?
あの、隙だらけの部屋着で、最近の熱帯夜に汗を滲ませながら寝ている姿を想像すると、ドクン、と孝之の心臓が高鳴った。

…いや、待て。
とは言ってもリスクが高過ぎる。
いくらなんでも不法侵入等してばれでもしたら警察沙汰だ。

何より孝之と彼女の住む階は四階だ。
子供の頃の身軽さだからベランダ越しに移動が出来たが今ではかなり厳しいだろう。
落ちてしまったら命の危険もある。

……が、触れたい。
舐め回したい。

もう何日も、理性と性欲が孝之の中でぐるぐると回り回っていた。

そんなある日、孝之はバイト先の備品庫でゴムイボ付きの軍手を発見する。
滑り止め効果は抜群で、これがあれば何かに掴まる時も便利そうだ。
……何よりこれがあれば指紋を残さないで侵入できる。

ハッと孝之は我に帰る。
無意識に、彼女の家に不法侵入することに物事を結び付ける自分が少し怖くなった。
頭を振り、バイトに励もうとするが…
孝之はその軍手を自分のカバンに入れるのだった。
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