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夜這い生活
第3章 決行
ドクン、ドクン、ドクン

心臓の音が止まない。
ガタガタと体の震えが止まらない。

一歩、また一歩と彼女の部屋へ足を進める度にその動悸は激しくなる。

しかし、孝之は引き返さない。
今日こそあの体に触れる。
ただ遠くから見つめるだけだったあの豊満且つ健康的な体を近くで舐めるように見回したい。

そして…

あわよくば犯したい。

この前と同じように、孝之は彼女の部屋の前まで来た。
……時刻が遅いこともあり、今日は電気が点く気配はない。
中から物音や会話も聞こえない。

……よし、寝ている。

音が出ないよう細心の注意を払い、孝之は彼女の家のベランダの柵を乗り越える。

足を着ける際に、ジャリ、と物音がしてしまう。
無意識に孝之はしゃがみこみ、息を潜める。

……大丈夫、気付かれていない。

考えてみると、これで鍵が開いていなければ今日のこの行動は無意味に終わってしまう。
……が、その心配は必要なかった。
思わずニヤリ、と口角が上がる。

孝之はこの蒸し暑さに心から感謝した。
そして、四階に住んでくれたことにも重ねて感謝する。

窓は完全に開け放たれ、彼女のプライベートを守るのは雨戸とカーテンのみだった。

孝之はこの後の計画を練る。
侵入した後は彼女が寝ている部屋を見つけなければならない。
この市営団地の間取りは全部屋同じだ。

運が良ければこの雨戸の向こうで彼女は寝ているはず。

孝之は、大きく、だが静かに深呼吸をする。

そして、雨戸に手を掛け、音が出ぬよう、音が出ぬようゆっくりゆっくり引いて行く。

いつの間にか静かになっていた心臓が再び高鳴り出す。
後頭部がジーンと震えるように感じる。

雨戸が開かれた。
後はこの風になびくカーテンを越えれば彼女の家だ。

孝之は靴を履いてこなかった。
もし侵入に気付かれた時、ベランダから逃げることは出来ないからだ。
恐らく出入口から無理矢理逃げることになる。
しかしそうなるとベランダに靴を置き去りにすることになり、逃げ仰せたとしてもそれが証拠となり捕まってしまうだろう。
考えた末の結論だった。

カーテンを開く。
部屋の電気は点いていないが、外灯の光が入り、うっすらと中の様子が伺えた。

誰かが布団の上、寝息をたてていた。
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