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妖魔滅伝・真田幸村!
第1章 吉継の娘
彼の娘がどうと、政宗は話していた。大谷刑部の娘が美しいのかどうか、幸村は真偽を知らない。そもそも姿を滅多に見せない年頃の姫君は、大谷家に限らず皆美人に違いないと噂を立てられる。容姿に関する噂など、所詮はそのようなものだ。
だが、毎日を「幸村」と名乗って潰す信繁にとって、それは好奇心をくすぐる変化だった。何が行われるかは分からない。しかし大谷屋敷で何かがある事は確かだ。幸村は街へ向かう道を翻すと、大谷屋敷の方向へと歩き出した。
屋敷には、門番が立ち身構えている。幸村は警戒されないよう朗らかな笑顔で、その門番に声を掛けた。
「もし、某は真田源次郎信繁と申すものでごさるが。立て札を見て、こちらに参りもうした」
「真田……? もしや、あの真田昌幸の、真田か」
真田という名前は、家の規模に対し広く世間に知られている。信繁はただの人質であるが、その父昌幸は謀将として名高い。小国の身で大身の徳川家を撃退した噂は、武士の間で誉れとして語り継がれていた。
だからこそ、名乗りは重要である。ただの信繁に、栄光を与える。門番は驚きを敬意に変え、頭を下げた。