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妖魔滅伝・真田幸村!
第1章 吉継の娘
「刑部様は、今回の件、かなり苦渋して決断されたそうだ。しかし真田となれば、決して悪い話ではありますまい。力になってくだされば有り難い、子の刻になったら、またこちらへ来てくだされ」
「子の刻……しかと承った。ありがとう」
苦渋の決断だが、真田なら悪くはない。そして、娘。頭に浮かんだのは、娘の嫁入りである。何らかの事情でどうしても娘を手放さなくてはならないのだとしたら、苦渋の決断と言われても納得である。そしてそれならば、真田という背景を持つ婚姻が政治的に悪くはないという整合性も出てくる。
だが、明らかに時間がおかしい。日の変わる真夜中に、人を集める理由がまったく分からない。そもそも大谷刑部くらいの地位がある娘の婚姻なら、誰が見るかも分からない立て札で募集などするはずもない。
ますます謎は深まるばかりだが、ひとまず幸村は、門番へ丁寧にお辞儀すると、夜まで待つため真田屋敷まで戻る。真実は日が暮れれば、嫌でも分かる。何が起きてもいいように一眠りしようと横になるが、非日常に心が躍り、なかなか幸村は寝付けなかった。