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妖魔滅伝・真田幸村!
第1章 吉継の娘
「政宗様、何をなされますか」
「何って、ずっと立て札が置いてあったら、他にこれを読んだ者がぞくぞく大谷屋敷に集まるだろう。姫を狙う敵が増えれば、俺の勝つ可能性が狭まる。だから今すぐ破棄するのだ」
「そのような真似をすれば、大谷刑部に叱られますよ」
「なに、姫を救えばそれでいいんだろう? 行くぞ小十郎、これの他にも、立て札があるかもしれん。全部引っこ抜いて、うちの薪にでもしてやる」
結局男は連れの諫言も聞かず、立て札を引っこ抜いて持っていく。派手な出で立ちとその名前、男は京でその名を知らぬ者のない、有名な武士であった。
「伊達、政宗……」
奥州を拠点に手を広げ、何度も太閤に反抗的な意志を見せては上手く切り抜け許される、若き大名。真田の次男として人質になるくらいしか価値のない「信繁」とは、身分の違う武士である。小十郎と呼ばれた連れの男は、側近である片倉景綱だろう。二人の背中を眺めながら、幸村は溜め息を漏らした。
「……あの立て札、何が書いてあったんだろうな」
大谷刑部と、政宗は何度も口にしていた。それは太閤が織田信長の家臣であった頃から仕える子飼いの一人、大谷吉継の事である。