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妖魔滅伝・真田幸村!
第1章 吉継の娘
真夜中、大谷屋敷へ現れた者は、数少なかった。政宗が立て札を引っこ抜いた結果か、それとも立て札の内容があまりに荒唐無稽であったからなのか、それは幸村にも分からない。だが見る限り、この場にいるのは政宗と連れの小十郎を除き、皆名の知れぬ武家の子であった。
通された部屋でしばし待っていると、一人の小姓が現れる。彼は集まった人間へ深々とお辞儀すると、口を開いた。
「本日は、あのような不審な立て札にも関わらずお集まりいただき感謝を申し上げます。刑部様はお体の具合が悪く、名代として私が皆様をご案内致します」
挨拶する小姓に口を挟んだのは、政宗であった。
「おい、その前に一つ確認させてくれ。本当に妖怪を退治すれば、刑部殿の娘を嫁にくれるのだな?」
幸村はその言葉に、心臓を跳ねさせる。娘を嫁に――これは、想定の範囲内である。だが政宗は『妖怪』と口にしたのだ。
「刑部様の名に誓い、お約束致します。あの妖怪を払い退治した後には、必ず姫様を輿入れさせましょう」
続けて小姓も、妖怪と話した。ここまでくれば、幸村も理解出来た。今日ここに武士が集められた、その目的を。