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妖魔滅伝・真田幸村!
第1章 吉継の娘
「妖怪は夜な夜な屋敷の奥で、男を寄越せと暴れまわります。おそらく奥へ向かえば、すぐに戦いとなるでしょう。立て札にも書きましたが、此度の件で命を落としても、それは大谷家で責は負いません。それでも良いと思われる方のみ、お進みください」
普通の集まりでない事は幸村も承知であったが、妖怪退治は流石に想定外であった。武士として帯刀はしているが、それが妖怪に通じるかは未知数だ。何より幸村は、生まれてこのかた妖怪という存在を見た事がない。
死の危険を背負ってまで、価値のある戦いなのか。だが集まった者は全て了解しているのだろう、誰一人帰らず小姓の後をついていく。
(……まあ、なるようになるか)
ここで引き返しては、武士としての矜持が許さない。幸村もそのまま続き、奥へと導かれた。
歩いていくと、辺りの空気が淀んでいく。進むたびなんとなく息苦しく、肩が重くなっていった。妖怪、というものが本当に存在するのだと、嫌でも思い知らされる。そして小姓は離れにある小さな蔵の前で足を止め、扉に手を掛けた。
「もう一度申し上げます。命を落としても、大谷家は一切の責を負いませんので……」