この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
妖魔滅伝・真田幸村!
第1章 吉継の娘
ぎい、と鈍い音を立てながら、蔵の扉が開かれる。少し隙間が開いた瞬間、中から吹く突風が皆を襲った。
「おやおや、今日は素直に贄を差し出すのかえ? それでよい、儂は腹が減っておるのじゃ」
姿を現したのは、醜悪な魔物ではなく、妖艶な美女だった。人目を引く金色の眼と髪、そして遊女のように着物は着崩し、体の線は殆ど露わになっている。
だが、彼女が人でないのは頭の上にぴんと立つ狐の耳、そして人の体ほど大きい九つの尻尾を見れば明らかである。しかし大谷家の娘を目当てに集まった下心ある武士たちは、その艶めかしさに生唾を飲み込んだ。
「だがのぅ、数がいれば良いというものではない。儂は面食いなのじゃ、不細工はいらん」
彼女が手を一振りすれば、武士の半数が吹き飛ばされ宙を舞う。そのまま屋敷の外まで放り出されてしまった。
「残りは四人か。顔が一番好みなのは……お主じゃな」
残されたのは、幸村と政宗、小十郎と、名も知れぬ若い武士が一人。彼女は大胆にも、身構える武士を相手に、歩いて目の前にやってきた。
彼女が選んだのは、色男としても名高い政宗だった。