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妖魔滅伝・真田幸村!
第1章 吉継の娘
彼女が政宗に爪を振るうのと、政宗が身を引くのはほとんど同時だった。鋭利な爪は政宗のうねる髪一本を散らしたが、血には染まらない。飛び退いた政宗はすぐさま刀を抜くと、下段に構え高笑いした。
「悪いな、こちらもお前を殺すために来てるんだ。あんたは好みの美女だが、つまみ食いで充分だ。死んでもらうぜ」
政宗が構えるのと同時に、小十郎は懐から笛を取り出す。政宗が目配せすれば、小十郎はそれを吹き始めた。
「その笛の音は……!」
「はっ、びびったか? 小十郎は代々神主の家系、妖怪を滅する退魔の一族だ!」
笛の音が場を包むと、白い靄が彼女に伸びる。政宗も足を踏み込み、靄と共に襲い掛かった。
彼女はくるくると身を翻しながら、尻尾で靄を払い政宗の刀を避ける。笛の音も相まってそれは踊っているようで、幸村の目を奪った。
「ん……?」
そして見つめていると、幸村は彼女に何か違和感を覚える。彼女が舞った残像に、彼女ではない姿がぼやけて見えたのだ。目をこすりまじまじ見つめるが、そうゆっくり観察する暇はなかった。
彼女の背中が蔵の扉にぶつかり、軽やかな動きが止まる。政宗はその隙を見逃さず、刀を振るった。