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妖魔滅伝・真田幸村!
第1章 吉継の娘
妖怪を操る彼は大蛙の背中から降り、幸村の首を掴む。
「これは私の獲物だ。そして勝者は私……褒美が欲しいからといって、手柄をかすめ取るのは感心しないな」
「違う、横取りするつもりじゃ……」
「ならば、黙って見ていろ。魔を滅するのは、私だ」
大蛇が天に体を伸ばせば、残った白い手も飲み込まれる。人型に膨らんだ体はしばらくぼこぼこ動くが、間もなく静止した。
「なんて事だ……」
幸村は青ざめ、押さえられた手を伸ばそうとする。一方、男は彼女が完全に飲み込まれたのを確認すると、あっさり幸村から手を離した。
「大谷刑部の娘を娶るのは、私だ。残念だったな」
「馬鹿な事を言うな!! 大谷刑部の娘は……あの妖怪だ!」
「なんだって?」
幸村は大蛇に駆け寄ると、口を開かせようと手を伸ばす。が、大蛇は幸村を睨み、尾を地面に叩きつけ威嚇した。
「どういう事だ、貴様」
「声が聞こえた。ぼんやりとだが、姿も見えた。おそらく、狐は大谷刑部の娘に憑依し暴れていたんだ。だから、わざわざこんな回りくどいやり方で人を集めたんだろう。ただの妖怪ならば、皆で力を合わせ倒せば良いだけなのだから!」