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妖魔滅伝・真田幸村!
第1章 吉継の娘
「まあ、こんな怪しい話に、長男が乗り込んでくる訳ないよね。誰かさんを除いては」
和紗はちらりと政宗の方を見ると、小さくお辞儀する。
「貴方、噂に名高い伊達政宗でしょう? 玉藻前が気に入るのも分かるよ、噂通りの男前で破天荒」
「……そりゃどうも」
政宗も状況が掴めていないらしく、返事が鈍い。だが和紗は皆の違和感を全く気にせず、今度は妖魔使いの男に声を掛けた。
「貴方の名前は?」
「私は、才蔵。霧隠才蔵と申す」
「才蔵……そっか。ちょっと、その蛇と蛙、消してもらえる? 大きくて、気持ち悪いし」
才蔵と名乗る男が目配せすると、大蛙は天に跳ね上がり虚空へ消えて、蛇も藪の中に紛れる。安堵の溜め息をついた彼女は、立ち上がると濡れた赤毛を掻きあげた。
「名のある大名に、由緒正しき退魔師。妖魔使いに、目当ての人。まさかこんなに成果があるとは思ってなかったな。全員ついてきて。父上――吉継が、待ってるから」
彼女はそれだけ言い残すと、屋敷の方へと足を進める。なぜ彼女が妖怪に憑かれたのか、何が目的なのか。幸村はもちろん皆不審がるが、今は後をついていくしかなかった。