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資料室の恋人
第8章 噂の先生
「日和?どうしたのぼーっとして…なんか顔赤いよ?」
「ううん、なんでもない」
そうだ…
資料室以外で先生がどんな風に大学で過ごしてるのか知らなかった。
無意識にため息が出る。
「もう!花火大会忘れないでよ〜!長期休み中だからね!」
「わかったっつーの」
直也が笑いながら言った。
6月が終われば7月から9月までの2ヶ月間、夏の長期休みが始まる。
ふと、佐倉を囲んでいた女子学生達を思い出す。
それにしても中学生に間違えられるとは…
先生はこんな私のどこがいいんだろう?
***
研究室の扉が控えめにノックされる。
佐倉の机が一番近い位置にあるため、はいと返事をした。おずおずと入って来たのは女子学生数人だった。
「どうしたの?」
「あの、佐倉先生にお聞きしたいことがあって…」
「援助交際の件なら全くのデタラメだから気にしないで。他に用件はある?」
「えっ、あっ…いえ、失礼しました」
何回目だろう。朝から確かめにくる女子学生が絶えない。何度も同じことを聞かれる。さり気なく探りを入れるように接されてイライラしていた。もういっそ、放送で流してくれと思う。全く仕事か進まない。
「佐倉先生こわ〜い」
パソコン越しにちらりと顔を出した森山がニヤニヤと笑う。
「論文見てやんないから」
「あっあっ、嘘です嘘です〜!」
森山は両手を合わせてぺこぺこ頭を下げている。