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資料室の恋人
第8章 噂の先生
佐倉は大きくため息をついた。
浅野や他の先生方も講義中で、研究室には佐倉と森山以外には誰もいない。
森山ならいいか、と佐倉は口を開く。
「仕事が全然進まないんだけど」
「お察しします…」
「なんで小柄な子といただけで援助交際になるの?」
情報が人から人へと伝わっていく時、実際に得た情報の他に無関係な情報がくっ付いてしまったり、大切な情報を削ぎ落としたりする。そんなことは分かっているし、自分の事だけなら気にしないのだが。
「勘弁してほしい…」
「まあ、そのうち風化しますよ」
机に伏せる佐倉を見ながら、森山はコーヒーをすすった。
「正直、私も噂を聞いた時はびっくりしました」
「援助交際って聞いたら誰でも驚くでしょ」
「さすがに援助交際ってのはデマだって分かりましたよ。そうじゃなくて…てっきり大月先生と付き合ってると思ってたから」
「…はい?」
「だって佐倉先生とお似合いじゃないですか〜!前に、付き合ってるんじゃないかって噂になりましたよ〜」
大月先生は経済学部の講師だ。フランス土産のチョコを頂いたことを思い出す。ワンレングスのボブをさらりと揺らしながら颯爽と歩く姿は、男子学生にとっては…男性職員にとっても目の肥やしだろう。
「オシャレだし美人だし優しいし…いい匂いするし!オトナの女性って感じ!魅力的じゃないですか?」
「まぁ、そういうのも魅力のひとつだとは思うけどね。人それぞれじゃないかな」
「うーん…ますますどんな人か気になります、佐倉先生の彼女さん!」
森山の言葉に日和を思い出す。
自然と頬がほころんだ。