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資料室の恋人
第9章 車窓の花火
「日和ちゃんは、好きな人とはうまくいってるの?」
ふと、疑問に思っていたことが口をついて出てしまった。
「えっ…」
突然のことに、振り向いた日和の顔は複雑な表情を浮かべている。
触れられたくない。
そう言っているような気がした。
「あ、ごめん、無神経だったね!どうなのかなって思っただけだから。深い意味は無いから…!」
言ってしまってから後悔した。
深い意味は無い…そんなこと言ったら、逆に深い意味があるみたいじゃないか。
航平が焦っていると、日和はぷっと吹き出して笑った。
「え…日和ちゃん?」
「いえ、笑ってごめんなさい。だって、先輩、すごく焦ってるから…可笑しくなっちゃって」
「だって、余計な事聞いちゃったなって思ってさ…ごめんね、本当」
「いえ、大丈夫です。その人とは、うまくいっているような、いっていないような…て感じです」
伏せ目がちに微笑んだ日和を見て、航平はズキリと胸が痛むのを感じた。
「…その人のこと、すごく好きなんだね」
「えっ!!」
「日和ちゃんの顔に書いてある」
日和の頬がみるみる赤くなっていく。