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資料室の恋人
第9章 車窓の花火
「付き合ってるの?」
「…い、一応…」
「うまくいってるじゃん!」
「いえ!この前喧嘩しちゃって…それから連絡とってないんです」
「そっか…仲直りできるといいね」
「はい」
日和が航平の言葉に嬉しそうに笑う。
「でも、俺だったら喧嘩しても放置しない」
「え?」
「それに、彼女の事を好きな男と遊ばせたりしない」
航平が日和をまっすぐ見つめる。
俺だったら…なんて、考えても意味の無い事。
きっと、彼女の事を一番知っているのも俺じゃない。
彼女を一番喜ばせることが出来るのも俺じゃない。
彼女が好きなのは、俺じゃない。
「先輩…?」
日和が絞り出すように言うと、今度は航平が吹き出して笑った。
「えっ?先輩??」
「ごめんごめんっ!すごい困った顔してたから!冗談だよ、冗談!あ〜っ、日和ちゃん面白い!」
「ちょ、ちょっと、からかうのやめてください!」
それでも。
彼女の恋を応援するにはもう少し時間がかかる。
まだ彼女を好きな気持ちは無くならない。
「お腹空いたね!俺、たこ焼き食べたい!」
「いいですね!」
この気持ちが消えて無くなるまで。
じっと待とう。