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資料室の恋人
第2章 C棟とエッフェル塔

午後の講義を終えると、日和たちはその足で駅前の居酒屋に行った。

金曜日ということもあり、店内は混んでいて、若い店員が小走りで厨房とテーブルを行き来していた。
時刻はまだ18時を過ぎたところだったが、サラリーマンや学生で賑やかだ。

「じゃ、生3つで!」

席に案内されると、明里がすかさず店員に伝えた。

合コンでは生とか言うなよ、と直也がボソッと明里に言ったが、本人はというと飲みに来たことが嬉しいのかテンションが上がりっぱなしだ。

「そうそう、今日先輩も呼んでるんだけどいいよね?」
「うん、いいけど。誰?」
「私と同じサークルの先輩」

明里は中学から吹奏楽部に所属していたらしく、大学ではジャズサークルに入っていた。
文化祭で明里がサックスを吹いているのを見たことがあるが、かなり様になっていたのを思い出した。

「その先輩は何吹いてるの?」
「トランペット。これがまたカッコよくて…」

そのとき、明里の携帯電話が振動とともに光って、着信を伝える。
噂をすれば!と言って電話に出ると、先輩が店の前に着いたとのこと。
明里は日和と直也に合図をすると、席を立った。

「明里がさ、その先輩をずっと日和に会わせたがってたんだよ」

直也が店を出る明里の姿を目で追いながら、話し掛ける。

「え、何で?」
「その先輩が日和に会いたがってたらしいけど」

ふーん…と興味の無さそうな返事をしたが、内心どんな人が来るのか期待している自分がいた。

「おまたせ!」

明里の声に振り向くと、明里とともに長身の男性が現れて、こちらへ頭を下げた。



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