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資料室の恋人
第2章 C棟とエッフェル塔

日和は顔が赤くなるのを自覚しながら、自宅へと歩き出す。大学横の大通りに出ると、毎日通っている坂道を登り始めた。
日和の頭の中では、航平の先ほどの言葉が行ったり来たりしていた。アルコールが入っていたしと自分に言い聞かせる。優しくていい先輩だと思っていたけど、すごく軽い人かもしれないと考えていた。

自転車をひきながら大学の敷地に沿ってゆるくカーブする坂を登る。中庭のフェンスごしに大学の塔が見えた。

ふと、頭に佐倉が浮かぶ。

時計を見ると、針はそろそろ23時を指すところだった。いつもなら、とっくに資料室を閉めて帰っている時間だ。A塔とB塔の陰に隠れているC塔が徐々に見えてくる。

C塔の最上階、資料室の明かりだけが杲杲と漏れていた。

「……あ」

資料室の窓際に人影が見える。

「先生……」

日和は言い終わらないうちに走りだしていた。


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